2020年3月14日土曜日

草稿を描かねばならない



草稿は単なる下絵では無いと書きましたけど、これが中々伝わりませんね。僕も学生の頃に先生から言われて線描きの草稿から完成イメージは中々作れなかった思いがあります。やっている間にいつの間にか出来る様になったと思っています。昔は草稿も墨で線描きでしたから消す事が出来ず、何度も紙を貼ったりして訂正されています。先達の先生方の展覧会などで草稿が展示されているのを見かけられると思いますけれど、そういうイメージで草稿を見て頂くと良いと思います。

今は基本的に鉛筆を使いますので消しゴムで消せますが最終は墨で書いたり少し楽してサインペンで書いたりして最後の線を決めます。場合によっては色をつけたりもしますが、基本的に色をつけるとそれに誤魔化されて却って曖昧になる気がするので僕はあまりやりません。

写真の草稿は以前に依頼されて描いた衝立の部分です。畳んだりしているので、結構シワになっていますけれど、花の部分などは紙を貼って位置を変えたり書き直したりしています。最終の線を墨で書き込んでから汚れた部分を消していますので比較的綺麗に見えますが、ああでも無いこうでもないとやっている間に黒く汚れて訳が分からなくなる事もあります。鉛筆で少し影をつけたりして、調子を見ながら完成時のイメージを頭に描きます。この作業が終わって初めて念紙を使って本紙に形を写し取ります。

作品の制作途中に何時でもこの時点の気持ちに戻れる様に壁に貼っておく事も多いです。
風景の時など、どんどん塗り重ねると線も消えて行くのでザックリで良いという人もおられますが、僕は線の問題では無くイメージを固める作業が大切だと思っているので相変わらず同じやり方です。これは人それぞれですが、何れの場合でも草稿は重要だという事に変わりありません。

日本画の場合は本紙に写し取った最初の一筆が最後まで影響して来ますので最初の一歩で間違うと中々仕上がらず、やっと出来た と思ったら草稿の時と全然違うイメージの作品になったしまったと言う事になったりします。草稿を道しるべとして進んで行くのですがその道標がグラついたら何にもならないですから。



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