2020年3月27日金曜日

墨の下地仕事


この前は草稿の重要性について少し書きました。その続きと言う事では無いですけれども本紙に念紙して形を写し取ってからの事を少し書いてみたいと思います。僕も若い頃は早く本紙に取り掛かって描きたいと言う気持ちが強かったのですが次第に慌てなくなりました。日本画という分野は精神的な物を大変重要視しますのでゆっくりゆっくりと仕上げて行きます。さて、写し取った本紙に骨書き(こつがき、ほねがきではありません)といって面相筆など細い筆を使って写し取った線の上を少し薄い目の墨で形をしっかりと書いて行きます。

最近はサインペンでも色々な種類が出ていますのでアマチュアの方などは使い勝手が良いと思われたものを使われても良いと思います。水性のものでも乾いたら不溶性になるものも多いですから後でにじむと言うことがなければ良いと思いますが、基本は墨です。

これからいよいよ本紙に取りかかりますが、前にも書いた様に岩絵の具というのは最初の色が最後まで微妙に透けて見えますので下塗りも疎かには出来ません。僕は基本的に墨を使って下地を作って行きますが、これは人それぞれで黄土を使う方もあれば金を使われる方もありますけど多分墨を使う人が多いのでは、と思っています。昔から墨に五彩ありと言いますからね。

墨絵と言うと少し意味が変わってしまいますけど薄墨を使って下地を作って行きます。丁寧な方だと本当に墨絵の様になさる方もありますし、真っ黒に近いほど塗り込まれる方もあります。僕はどちらかと言うとその中間あたりでしょうか。若い頃は真っ黒になるまでやった事もありますけれど後が大変なんで。相当塗り込まないと黒っぽい墨の色がいつまででも出て来て、黒ーい画面になってしまうので程々になりました。

これが出来て初めて岩絵の具と言う事になります。何時も感じる事ですが、ここまで来るのが大変です。先輩方からも墨の仕事は面倒やけど、これをやっておかないと仕上がらんしなあ、とよく聞きました。取り敢えず、ここまでが下地と言う事になるのでしょうかね。写真は適当なものがなかったので、あまり内容とは関係ないです。



2020年3月16日月曜日

ちょこっとオーディオ



随分と前の事になるけれどMATRIX社と言う中華製の DAコンバーターを確か上海だったと記憶しているけれど代理店から購入しました。その頃に見かけたWebを参考にしてコンデンサーなど交換しながら自分の気に入った音に時間を掛けながら仕上げて行った代物を現役と言うより常用しています。

今はこのメーカーの代理店も日本にある様ですけれど当時は現地から送って貰うしか方法がありませんでした。何年も前に中国から個人輸入というのでそれなりに気を使いましたけど確か支払いはPaypalだったので思い切って注文したことを覚えています。(この代理店は大丈夫よと言う情報を信じて発注)

よく馴染んで響きよく鳴ってくれるのでデジタルは殆ど全てこのコンバーターでアナログ変換させています。特にこの頃の様にネット経由でも音質劣化が少なく送られてくる様になるとCDに取って代わって MAC経由で音楽を垂れ流すには大変便利であります。

特にクラシック好きにはインターネットラジオを使うとヨーロッパのオンデマンドなど(特にデンマークのDR P2はライブ録音など多いのでお気に入り)音質も良く、チャンネルも多いので飽きないですね。昨日、ベルリンフィルのデジタルコンサートホールからメールで新型コロナウイルス対策の一環として今月中無料開放されるとありました。早速、無料チケットで聴いています。

こういう放送をMACを使って垂れ流しておきます。絵を描いていて邪魔と思えばブチっと切ってしまうだけなので我が儘そのものですけどね。


2020年3月14日土曜日

草稿を描かねばならない



草稿は単なる下絵では無いと書きましたけど、これが中々伝わりませんね。僕も学生の頃に先生から言われて線描きの草稿から完成イメージは中々作れなかった思いがあります。やっている間にいつの間にか出来る様になったと思っています。昔は草稿も墨で線描きでしたから消す事が出来ず、何度も紙を貼ったりして訂正されています。先達の先生方の展覧会などで草稿が展示されているのを見かけられると思いますけれど、そういうイメージで草稿を見て頂くと良いと思います。

今は基本的に鉛筆を使いますので消しゴムで消せますが最終は墨で書いたり少し楽してサインペンで書いたりして最後の線を決めます。場合によっては色をつけたりもしますが、基本的に色をつけるとそれに誤魔化されて却って曖昧になる気がするので僕はあまりやりません。

写真の草稿は以前に依頼されて描いた衝立の部分です。畳んだりしているので、結構シワになっていますけれど、花の部分などは紙を貼って位置を変えたり書き直したりしています。最終の線を墨で書き込んでから汚れた部分を消していますので比較的綺麗に見えますが、ああでも無いこうでもないとやっている間に黒く汚れて訳が分からなくなる事もあります。鉛筆で少し影をつけたりして、調子を見ながら完成時のイメージを頭に描きます。この作業が終わって初めて念紙を使って本紙に形を写し取ります。

作品の制作途中に何時でもこの時点の気持ちに戻れる様に壁に貼っておく事も多いです。
風景の時など、どんどん塗り重ねると線も消えて行くのでザックリで良いという人もおられますが、僕は線の問題では無くイメージを固める作業が大切だと思っているので相変わらず同じやり方です。これは人それぞれですが、何れの場合でも草稿は重要だという事に変わりありません。

日本画の場合は本紙に写し取った最初の一筆が最後まで影響して来ますので最初の一歩で間違うと中々仕上がらず、やっと出来た と思ったら草稿の時と全然違うイメージの作品になったしまったと言う事になったりします。草稿を道しるべとして進んで行くのですがその道標がグラついたら何にもならないですから。



2020年3月5日木曜日

取り敢えず日本画の岩絵具



方針転換したものの、どんなことから書いたらよいのかなぁと思っています。日本画と言うと墨絵ですか?と聞かれる事も多く『はっ?』と思う様に一般にはこんな事も知られていないのかと思う事も多いです。ご存知のお方は何だそんな事と思われるかもしれないですが、日本画で使う岩絵具というのは、不透明絵具と透明絵具の両方の性質を持っています。岩絵具は本来様々な石を砕いて絵の具にしてありますので、絵の具の粒子そのものは不透明なものです。しかし、細かく砕いた石を画面にバラバラと撒くのと同じ様に筆を使って塗って行くわけですから、当然その隙間から下の紙の部分が見えています。ですから目にはその絵の具の色と紙の色が混色して見えます。これだと都合が悪いので更に別の絵の具を重ねて行きます。すると紙の部分は少し見えなくなって新しい絵の具が隙間を埋めます。それを重ねて行く事で次第に紙の部分が見えなくなって行きます。丁度、河原が色々な小石で埋め尽くされるのと同じで、窪んだところに絵の具が嵌ります。つまり、上から重ね塗っても前に塗った絵の具が消えることは無く、ちゃんと表面に表れています。ですから、以前に塗った絵の具の色と次々塗り重ねた絵の具の色が混色して見えます。と言うことは逆に考えると、一度塗った絵の具はなかなか消えない(消せない)と言うことです。
ですから、草稿の段階で十二分に検討し、更に出来上がりのイメージを創り、どう仕上げて行くのかと言う事をその時に決めます。早く描きたいと言う一心から草稿を適当にして取りかかると中々仕上がらないと言う事になるのです。ですから日本画の草稿というのは単なる下絵ではないのです。

2020年3月2日月曜日

方針転換しました。


近江神宮に早咲きの桜が咲いていました。今年は暖かいので早く咲いた様です。

このブログでは絵のことは書かないと決めていたんですけど、たつの(兵庫)日本画教室の生徒さんや他の皆さんからも絵画に関する情報が欲しいと言われて方針転換して絵の事も折に触れて書いていくことにしました。日本画教室の生徒さんには絵画とは何ぞや?と言う事をずっと言い続け、又生徒さんも少しでも理解しようと努力してくれました。何を隠し立てする事もなく技法的な事などもどんどん伝えています。昨今のメディアが伝える所謂アートとは少し違う伝統的な日本画に対する考え方を喧しく伝え心がける様に教えて来たつもりです。

まあ、この我儘な先生によく付いて来てくれていると思います。特にたつの教室は25年を迎え、ほぼメンバーの入れ替わりも無く足取りは遅いものの着実に絵を描く楽しみを実感してもらっている様です。

僕の後は子供達も誰も絵を描いていく人がいませんので自分の持っている絵画の表現方法とかアマチュアだとは言え絵が好きで習っている方々の少しでもお役に立てるならと思っています。言葉で伝える事も難しいんですけれど少しづつでも判りやすくこのブログで書いていきたいと思います。